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「Ero Lolita」という言葉を巡って――言葉の壁と文化の境界線

この記事を書く前に伝えたいこと

まず最初に、ワード検索などからこの記事に辿り着いた方へ。
ロリィタファッションを愛する多くの人にとって、それは性的なものではなく、そのような見方を望んでいないということを前提に読んでいただければ幸いです。
また、この記事はあくまで私個人の見解です。
一人の日本人ロリィタとしての意見であり、日本のロリィタファッション愛好者全員が同じ考えだとは思わないでください。
海外の方にも読んでいただけたら嬉しいです。
ただし、翻訳機能によって細かなニュアンスが正確に伝わらない可能性があることをご理解いただければと思います。

2026年5月、Xで起こった他国文化の衝突

2026年5月8日〜10日頃、X(旧Twitter)ではロリィタファッションのジャンル分類について議論が起こっていました。
テーマは「Ero Lolita(エロロリ)」という呼び方、ジャンルについてです。
Xでは他国の投稿も翻訳表示されるようになったため、日本・韓国を含むアジア圏のロリィタと、海外コミュニティのロリィタの間で、言葉に対する認識の差が可視化されたように感じました。
日本のロリィタファッションに親しんできた人の中には、「Ero Lolita」という言葉に驚いた人も多かったのではないでしょうか。
「ロリィタファッションはそういうものではない」と感じた人も少なくなかったと思います。
そのため、日本や韓国のロリィタの中には、「そのジャンル分けは控えてほしい」と発言する人が現れました。
一方で、海外コミュニティでは、「Ero Lolita」は「Sweet Lolita」や「Classical Lolita」と同じように、すでに一般的なジャンル名として使われている、という意見も多く見られました。

海外で言われる “Ero Lolita” とは何か

私は2000年頃からロリィタファッションを着ており、細々とではありますがインターネット上でも活動してきました。
「エロロリ」という言葉を耳にしたこと自体はあります。
ただ、少なくとも私自身は、それをロリィタファッションの独立したジャンル名として強く認識していたわけではありませんでした。

では、海外コミュニティで言われている「Ero Lolita」とは何なのか。
主に、肌の露出を少し増やしたコーディネートや、セクシーなアクセサリーを取り入れたスタイルを指しているようです。
例えば、オフショルダー、短めのスカート、コルセット、ハーネス、ボンデージ風アクセサリー、クリノリンなど。
では、日本ではそのようなコーディネートが存在しなかったのかというと、そうではありません。
日本ではそれらは「ゴスロリ」「ゴシック」「パンクロリィタ」「フェティッシュ寄りのスタイル」として扱われていた印象があります。

ブログを長く見てくださっている方はご存知かもしれませんが、私自身もコルセットやハーネスベルト、クリノリンなどのアイテムが好きです。
18〜19世紀のファッションには、オフショルダーのドレスも存在しますし、コルセットやクリノリンも欠かせない存在でした。もちろん用途や意味合いは当時とは異なりますが、そうした歴史的装飾への憧れは、ロリィタファッションの魅力のひとつでもあると思っています。

実際、私自身も過去にこのようなコーディネートをしていました。

2006年。BTSSBのトップスとJaneのスカート
2005年。h.naotoのコルセットビスチェとBTSSBのスカート
2013年。millefleursのコルセットドレスと自作のクリノリン。

今振り返ると、海外コミュニティでは “Ero Lolita” と分類される可能性もあるのかもしれません。
ただ、少なくとも当時の私は、そのような認識で着用していたわけではありませんでした。
「セクシーさ」を表現したいというより、退廃美・耽美性・装飾性への憧れに近かったと思います。

日本と海外で異なる言葉の違いと日本での実体験

今回の議論を見ていて感じたのは、やはり言語や文化の違いはとても大きいということです。
海外の方の意見を見ると、「Ero」という単語には、日本語ほど直接的な性的ニュアンスはなく、むしろ日本人が使う「フェティッシュ」という言葉のほうが、そのような意味合いに近いという話もありました。
私はこれを今回初めて知りましたし、逆に海外の方も、「エロ」という日本語が日本ではかなり直接的な性的表現として受け取られることを、初めて知った方も多かったのではないかと思います。

また、海外ロリィタさんが指摘されていた「Lolita」という単語自体が、日本国外では文学的・性的な文脈を強く持つ言葉であることも事実です。
しかしながら、日本では「Lolita」という言葉がそうした意味とは切り離され、独自のファッション文化として発展してきました。
そのため、日本側には「性的な意味で使っているわけではない」という感覚が非常に強くあります。
「ロリィタ」「ロリヰタ」という表記が使われるようになったのも、性的な意味の“Lolita”とは違うものだと表現したい気持ちが背景にあったからです。

私は今回の議論を見た際、Xでも自分の意見を投稿しました。

すると、一部の海外ユーザーから、「どんな服装でもセクハラ被害は起こる」「Ero Lolitaだからという理由ではない」という意見も見かけました。その意見自体は理解しています。
もちろん、どんな服装をしていても被害に遭う可能性はありますし、海外にそのような問題が存在しないとは思っていません。
私が疑問として投げかけたかったのは、日本ではロリィタファッションを着ているだけで、性的な視線や偏見を向けられる経験をする人が少なくなかった、ということでした。

最近は私自身も年齢を重ねたこともあり、そのような被害はほとんどありません。
しかし若い頃、まだロリィタが少し珍しかった時代は街を歩いているだけで、
「可愛い服だね。服を買ってあげるから○○円でどう?」と声をかけられたり、後をつけられたりしたことがありました。
「スカートの中ってどうなってるの?」
と言われたこともあります。
そして、「その服を買うためにそういうことをしているんでしょ」という偏見を向けられることもありました。
だから私は、ロリィタファッションが少女的・人形的な世界観だから以前に、どんな系統のロリィタであっても、セクシーな要素を取り入れていたとしても、それを即座に性的消費として見られたくない、と思っています。
だからこそ、「エロ」と「ロリィタ」という言葉を強く結び付けることに抵抗があります。

ここで誤解してほしくないのは、海外コミュニティで「Ero Lolita」と呼ばれているスタイルそのものを否定したいわけではない、ということです。
むしろ、私はそのスタイル自体には魅力を感じています。
退廃的で耽美的な表現、過剰装飾、フェティッシュ的な空気感は、ロリィタ文化とも昔から近い場所に存在していたと思います。
文化は国ごとに変化し、独自に発展していくものです。
日本でも海外由来のファッションや文化を独自解釈して楽しんできました。
そのため、海外で「Ero Lolita」というジャンルが独自に発展していること自体を私は否定したいわけではありません。
しかし、少なくとも着ている本人がそう名乗っていない場合には、そのラベル付けは慎重であってほしいと感じています。

昔のロリィタ文化と“創作写真”の時代

特に、海外のWikiやSNSなどで過去の『ゴシック&ロリータバイブル』の写真や、Mana様、MOON香奈さん、スナップ写真などを「Ero Lolita」と分類しているのを見かけることがあります。
以下は海外ロリィタさん向けのロリィタWikiです。

Ero Lolita
E…

けれど、それらは当時の日本では、必ずしもそのような認識では見られていなかったと思います。
ここで、当時の文化背景についても少し説明したいです。

一昔前には、「創作写真」と呼ばれるような活動文化がありました。SNSではなく、個人サイトやブログが主流だった時代です。
なお、「創作写真」という呼び方は、当時そのような正式なジャンル名が存在していたわけではなく、私が当時の空気感や活動内容を説明するために便宜的に使っている表現です。
人によってはコスプレ文化の一種と感じるかもしれません。しかし、活動していた側にとっては自分の世界観や内面を写真表現として作品化する感覚に近いものでした。
ポートレートに近い部分もありますが、より物語性や芸術性、アンダーグラウンド性の強い文化だったように思います。
そのため、ダークさや退廃性、ショッキングな表現を取り入れる活動者も多く存在しました。
当時はヴィジュアル系バンド文化とも距離が近く、ロリィタファッションを着ている人の中には、そうした音楽や世界観に強く影響を受けている人も少なくありませんでした。

私自身も、そうした創作活動を行っていた一人です。
文章だけでは伝わりにくいと思うので、当時私が行っていた創作写真活動の一例を掲載します。

これらは、現在SNSで見られる「ファッション投稿」というより、世界観表現や作品制作に近い感覚で撮影していたものです。

『ゴシック&ロリータバイブル』に掲載されていた写真の中にも、私はこの「創作写真文化」に近い空気を感じています。
もちろん雑誌である以上、ファッション紹介としての側面もあったと思います。
ただ写真作品としての演出や世界観表現も非常に強かった。
そして、写真作品の中のコーディネートをそのまま日常着として街中で着ていたわけではありません。
もし着るとしてもハロウィンや夜のイベント、一部アンダーグラウンドな交流イベントなど、場に合わせて着用されていた印象があります。
また、平成初期はロリィタ以外のファッションでも、キャミソールやミニスカートなど現在より露出の多いスタイルは珍しくありませんでした。
そのため、当時の「ゴス」「ゴスパン(ゴシックパンク)」で肩を出すスタイルなども、特別視されていなかったように思います。
もちろん当時からロリィタファッションは「JSK一枚で着るのはダメだ」「短すぎるスカートは好ましくない」と考える人もいましたし、その価値観もまたロリィタ文化の一部だったと思います。

私が伝えたいことまとめ

長くなってしまいましたが、私の考えを簡単にまとめると、以下の通りです。

・日本では「エロ」という言葉が非常に直接的な性的ニュアンスを持つため、ロリィタファッションとの組み合わせに抵抗を感じる人が多い。
・少なくとも、自分からそう名乗っていないロリィタに対して、そのラベルを付けることには慎重であってほしい。
・一方で、海外で独自に発展したスタイルや文化そのものを否定したいわけではない。私はそのスタイル自体には魅力を感じている。

この記事は、どちらかを攻撃したいのではなく文化と言葉の受け取り方の違いについて、私自身の経験から書いたものです。
ロリィタファッションが世界中に広がり、それぞれの国で独自に愛され、発展していることはとても嬉しく思っています。
言葉や文化の違いで戸惑いが生まれることもありますが、お互いの感覚や背景を知りながら、同じ「好き」を共有できたら素敵だなと思います。

これからも、それぞれの好きな世界観を大切にしながら、楽しくロリィタファッションを着ていけますように。💖